小児の皮膚良性腫瘍

こどもの身体のあちこちに生じる皮膚の良性腫瘍の摘出手術を行っています。
もっとも遭遇するのは石灰化上皮腫です。顔や身体、腕、足などいろいろな部位に生じます。
・日本形成外科学会のサイトの解説にリンクしました
ごくまれですが、石灰化上皮腫の中で内出血がおこって、赤黒く腫張して、あたかも悪性腫瘍のような外観を呈した場合もあります。血液腫瘍科にも診察して貰って、切除生検を行い、迅速病理検査で悪性ではないと判って、ひと安心しました。

他には、鼻根部や眉毛の外側あたり(眼窩の上外側部)でよく見られる、デルモイド(類皮嚢腫)があります。摘出すると、袋に包まれた腫瘤で、中はクリーム様の内容物がみられ、ときに毛が入っています。
 

あざ、母斑、ホクロ

黒いあざ、黒子(ほくろ)は、小さなホクロなら誰しもあるのではないでしょうか。
黒あざには、母斑細胞があります。色素性母斑ともよばれます。ときに巨大な母斑も生じます。

巨大色素性母斑というタイプでは、悪性化の確率が高いとされています。画像は英語版のウィキペディアから引用しています。

最近、「自家培養表皮による母斑の治療」が可能になってきました。患者さんの皮膚を一部切り取って、細胞培養することで、表皮細胞シートを作成します。母斑を切除したところに、その細胞シートを移植するそうです。画期的な治療法ですが、皮膚の成分である真皮は培養できていないため、薄い表皮だけの移植となりますから、治療後の見た目や触った感じは、普通の皮膚と同じというわけにはいかないようです。
リンク:自家培養表皮によるあざ(母斑)の治療

巨大な母斑

脂腺母斑

こども病院でもしばしば、治療している疾患がこの脂腺母斑です。たいていの患者さまで頭に生じています。正常皮膚色から、黄色〜ダイダイ色で、やや凸凹しています。丁度、みかんのかわのようです。

脂腺母斑部は毛髪がありませんので、禿げており、赤ちゃんの頃に受診することが多いです。
年をとると悪性腫瘍がおきることがあると昔から言われていましたが、良性腫瘍が出来る場合もあり、続発性腫瘍と呼ばれます。「皮膚腫瘍は基底細胞癌が多く、ついで各種汗器官系腫瘍、脂腺系腫瘍、毛包系腫瘍、有棘細胞癌の順といわれています」皮膚科学会サイト リンク先のサイトに写真もあります。

思春期になると、脂腺母斑は厚ぼったく変化するため、思春期前の小学生までに切除することがすすめられます。当院では、乳児期に入院手術する場合が多いです。

血管腫

血管腫と呼ばれる赤あざ、血管の先天的疾患には、いろいろな種類があります。

単純性血管腫は、生まれつきの血管腫病変で、もっともしばしば見られます。皮膚の真皮層の毛細血管拡張なので、圧迫すると血液が押しやられるため白く皮膚の色になり、圧迫を離すと赤くなります。

血管腫用のレザー治療器が開発されて、第一選択と言えます。色素レザーと言う種類の装置です。

Vビームという製品が有名で、大学病院でも導入されています。残念ですが、千葉県こども病院にはありません。

全国のVビーム導入施設一覧が公開されています。千葉県内でもいくつかの施設で持っています。

東海大学形成外科の河野太郎先生が監修した「よくわかるVビーム治療」というメーカーのサイトがあるのでご覧下さい。
こうしたネット上の情報が増えたので、専門家が監修しているサイトは参考に出来ます。

イチゴ状血管腫(乳児血管腫)

血管腫、血管奇形学会”サイトから、引用してみます。
生後間もなく皮膚表面に赤い斑点ができ、やがて盛り上がり始めます。生後半年くらいまでの間に表面が光がかった「いちご状」とよばれる状態になりますが、その後は大きくなることなく、むしろ自然に色が落ちていくようになります。多くの場合、小学校低学年くらいまでの間に赤みがひいていきます。

さすが、血管腫の専門家によるサイトですから、実に判りやすい解説と思います。

生まれたときには無くて普通の皮膚の場合、やや赤みがあり単純性血管腫のような外観の場合もあります。病院のNICUに入室した新生児のお子さんで、単純性血管腫かと思っていたら、3週間位して盛りあがってきて、実はイチゴ状血管腫だったことがありました。生まれたばかりの時期では、早合点はいけません。

薬物療法について

小児用の乳児血管腫治療薬”ヘマンジオルシロップ”が、最近使えるようになっています。この血管腫は、何もしなくても縮小する(自然消退)傾向があります。治療するばあいには、手術、レザー、冷凍法、持続圧迫などの他の治療も考慮して、メリット、デメリットを考える必要があると思います。

薬物療法の背景・・・2008年に高血圧の薬「プロプラノロール」が、乳児血管腫に効果があることが報告されて、世界中で治療報告がでました。ただ、全部のイチゴ状血管腫に必ず効果があったわけではなかったです。日本では小児用のシロップ剤が2016年に使えるようになりました。

もともと、成人の高血圧の治療薬ですから、血圧低下がおこります。そのため、こども病院では小児科の血液腫瘍科の先生が、全身状態をしっかり観察しながら入院治療として行うことがあります。

製薬会社マルホによる「乳児血管腫の治療」解説サイトです。

なお、こども病院の近隣では、千葉ろうさい病院形成外科で血管腫の治療を積極的に実施しています。
こども病院から、紹介する事もある病院です。(形成外科部長は力久先生です)

千葉ろうさい病院には、レザー治療装置Vビームもあります。

ヘマンジオルシロップ(プロプラノロール)の17の注意点

この項目は、兵庫県の小児科医師岡本先生のサイトから引用させていただきました。
m3.comのwebセミナー「乳児血管腫セミナー2017」の内容とのことです。医師向けの内容のセミナーですので、一般の方には難しいかもしれません。webセミナーは斗南病院形成外科・血管腫・脈管奇形センターの佐々木先生が司会で、熊本大学皮膚科の神人正寿先生が話されました。

岡本先生のページは、「乳児血管腫の治療法。プロプラノロールの適応と17の注意点

 

  1. 禁忌と慎重投与の項目を確認しましょう。
  2. 事前の心電図検査は必須です。
  3. 成育医療センターでは心エコー検査も必須としています。
  4. 潰瘍のある乳児血管腫はヘマンジオルの絶対適応であり、かつ慎重投与でもあります。高K血症に注意し、時々採血しなければなりません。(採血間隔については、アドバイスできません)
  5. 下痢の副作用が多いです。国外で5.3%、国内で12.5%に見られました。脱水を起こすような下痢ならヘマンジオル中止もやむを得ません。軽度の下痢なら少し様子見、少し重症な下痢なら減量して様子見などがよいようです。
  6. 体重増加に伴って、服薬量は調節しましょう。
  7. 乳児血管腫は、普通は命を奪うような病気ではありません。美容面でヘマンジオルを導入するなら、安全面を第一に考えましょう。
  8. 低血糖を起こすことがあるので、食後に内服しましょう。胃腸炎などで食事が取れない時は、ヘマンジオルはいったん中止しましょう。
  9. 薬を吐きだしたら追加投与は不要です。安全面を第一に考えましょう。
  10. RSウイルスなどでぜーぜーしてるときも、ヘマンジオルはいったん中止です。
  11. 効果がある症例では、ヘマンジオルを開始して数日で色素が少し薄くなるように感じます。
  12. 投与から24週間後で約80%にヘマンジオルの有効性が確認されました。まだ治っている過程であるならば、24週間以降もヘマンジオルを継続して問題ありません。
  13. 乳児血管腫がよくなったと思ってヘマンジオルを終了させても、30%で再燃を認めます。そのときはまたヘマンジオルを再開しましょう。再燃させないために、漸減終了させるという方法をとっている施設もあります。
  14. 効きが悪くて痕が残りそうなときはレーザーと併用します。小児科だけで抱え込まず、形成外科や皮膚科にも相談しましょう。
  15. 低出生体重児で生後5週以内であっても、命に関わるような場所に血管腫がある場合は、ヘマンジオルが考慮されます。リスクとメリットをてんびんにかけて慎重に投与します。
  16. クリニカルパスが有効です。小児科、循環器科、形成外科、皮膚科などいろいろな科が参加するなら、クリニカルパスをぜひ作りましょう。
  17. 新しい薬ですので、現時点(2017年3月)では2週間までしか処方できません。遠方からの受診であれば、処方だけは近医にお願いし、フォローは基幹病院で行うという方針の施設もあります。